銀座人インタビュー<第5弾>
銀座にゆかりの深い「銀座人」たちに弊店渡辺新が様々なお話しを伺う対談シリーズ。普通では知ることのできない銀座人ならではの視点で見た、銀座話が満載です。

銀座人インタビュー〈第5弾〉銀座の商売(あきない)の継承
遠藤波津子グループ 遠藤 彬様 × 銀座いせよし 千谷美恵様

銀座で商売をするということ

渡辺:銀座で長く商売を続けていくために、何か感じられていることはありますか。

遠藤:ある意味で我慢をしなければいけない。前にもちょっと新ちゃんに話したけれど、半分以上我慢ですよね。
 銀座で本当に商売になるのかというと、必ずしもそうではない。

渡辺:土地代も高いですしね。

遠藤:ほかのところでは商売になっても、銀座ではなかなか難しいということもある。だけどそこに伝統的なお店を持ち続けてるという、我々にそこで商売させてもらっているという思いがあるから、それは我慢して持ち続けていこうと思っている。そこで広く儲かるかと言われると、僕はそうでもないのかなと思うんだけれど。

渡辺:また別の我慢で、例えば儲かるから何をやってもいいっていうわけじゃないといった風潮が、銀座にはありますよね。

遠藤:こっちが儲かるからって、お料理屋さんをやっていた人がラーメン屋をやるかというと、銀座の人はそこまで飛躍しないのかなって思う。自分の商売はこれだっていうひとつ筋の通った考え方の人が多いのかな。

渡辺:先日、外資系ファッションの責任者と話をしていたんですが、それこそ百億近い単位で投資して銀座にビルを建てて、いきなり真隣に安売りショップなどができてしまうと、いったい何のために投資したんだか、本国に対して説明がつかない、といったことをおっしゃっていました。ブランドとしての銀座に投資している部分もあるということだと思うんです。
 これが今、現実に銀座の中で起きていることなんですが、こんな状況はこの先も続くと思われますか。

遠藤:安売りの商売自体があと10年、今と同じような成長を続けていけるかどうかというのは、ちょっとわからないですよね。銀座の人たちは、もともと自分たちでやってる商売を、今の安売りのショップのように急成長はしないけれども、プライドと合わせてちょっと我慢して持ち続けているわけです。

千谷:確かにおっしゃるように、急成長は目指してないですね。

遠藤:というのは、我々の店は一過性のものじゃない。今年、何十倍もの利益が出て、来年になったら落ちちゃったといった話ではなくて、ずっと長い目で何十年というタームで見ていく力を持っている。
 もしかしたら考え方が古くて、今の時代そんなことを言っているほうがおかしいのかもしれないけれど、だけどやっぱりそういう考えってどこかにあるんです。少しずつ改善してこれを何とか持ち続けていかないと、という思いがね。例えば、安売りに転化したときにこのモチベーションを保てるだろうかと思うとそれは難しい。だから何でもいいという考えは、ちょっと我々にはないのかなと・・・。

渡辺:先ほどご両親がある種、はたから見ていて採算度外視でもモノにこだわったということは。

遠藤:そう。安売りショップにはちょっと難しい。悪い意味ではなく、商いのスタイルが違うわけだから。

千谷:商売が好きなのと、今までの先人たちがつくってきたものを大切にしようという気持ちですかね。自分の家を大切にしようという人は、日本全国にいらっしゃるんでしょうけど、ビジネスの街でそれがしっかりと残ってるところは珍しい。銀座が本当に自分の家というか、そういう意識が強いのかなと思います。

渡辺:先日、サンモトヤマの会長が面白いことをおっしゃっていたんですが、ファストファッションのお店が出てくるというのはすごくいいことだっておっしゃるんですね。というのは、いろいろな国から確かに値段は安いんだけど安売りの中の一流が出てくるから非常にいいことだし、また価格が安いから、若い世代の人がコーディネートをたくさん勉強できると。コーディネートを勉強したその次、何か物足りなくなったところを銀座の人たちがきちっと取り込んでいかないといけない。ということをおっしゃっていて、なるほどなと思ったんです。
 ここ最近、浴衣はすごい数が出ているじゃないですか。呉服屋さんじゃないところで、ものすごい安い値段でフルセットが売っている。花火大会に行くとすごい数の子が浴衣を着ている。少なくとも20年前にはなかった光景だと思うんです。我々、若い頃にあんなに浴衣着た覚えなんて・・・。

千谷:ないですものね。そうやって着ていただけることは呉服屋としてもありがたいことです。だけどそこで懲りられちゃうと、ちょっと嫌だなという思いはあります。やはり価格相応のものだと思うので、着ると暑いとか動きにくいとか。

渡辺:なるほど、似て非なるものでイヤになられてしまうと。その先がなくなってしまう。

千谷:ええ。なんかうまく着られないとか。結局それは、彼女たちの着付けの技術が悪いのではなくて、もともとうまくは着られないようなものなので、そこで懲りられちゃうと・・・。
 でも必ずその中の何人かは「いいものを着たい」となるようで、何回か浴衣を着た人がうちにいらっしゃって「今度はいせよしさんで作ってみようと思う」と。来年こそ、再来年こそ、と夢を追うような感じで若い方が来てくださるので私もとても嬉しいです。

渡辺:千谷さんは講演会なんかもやられてるいらっしゃいますが。そういった活動と着物とをどのように結び付けていかれるんですか。

千谷:日本のもの、いわゆる「和」のものって、全部根底でつながっているんです。ご神佛があり、能があり、歌舞伎があり、お茶あり、お花があり、たくさんのことがつながっている。それをかじっていただいて、少しかじるとこっちもわかる。で、こっちのふたつがわかると、5つわかる、10個わかるということになりとても楽しいんです。なかなか商売につながるところまでにはなりませんが、やはりその楽しみを知っていただく、ということを伝えていきたいなと思っています。

千谷美恵
銀座いせよし
千谷美恵

立教大学在学中に、米国の大学に交換留学し卒業。帰国後、立教大学を卒業しシティーバンクに就職。銀座支店長を経て「伊勢由」入社。
2009年「OLが自分のお金で買える着物を」というコンセプトのもと、銀座6丁目に「銀座いせよし」を立ち上げる。

 同時進行で今度はもう少し着物に近い、具体的な小物の作り方など、そういうことをやって楽しんでいただきたい。今の女性は皆さん頭がいいし、自分に対しての投資にすごく熱心なので、そっちから入っていくのもいいかなと思っています。

渡辺:自分にお金をかけますよね。

千谷:自分の教養への投資でしょうか。今までは着飾るとか、お化粧するとか、見た目のことにお金をかけていたのでしょうけど、今は中身から入っていこうとされているので、その勉強熱心なところを見習いつつ私も一緒に勉強しようかなという感じですね。

渡辺:今はインターネットが充実していて情報を得やすい。お店にも情報満載で来られますよね。

千谷:そうですね、皆様とても勉強をされていて。

渡辺:遠藤さんのところも皆様調べられてからいらっしゃいますか?

遠藤:例えば衣装なんか選ぶというと、そこら辺の情報を全部知ってるわけです。その上でいらっしゃるから、なかなか決まらない。その日、いっぺんでは決められないわけですね。何回かいらっしゃってから決めるというお客様が多いです。

渡辺:情報過多で余計に迷う時間が増えてしまうわけですね。

銀座いせよし
東京都中央区銀座6-4-8 曽根ビル3階
TEL. 03-6228-5875
11時30分〜19時(土曜/11時30分〜18時)
休:日曜・祝日
銀座いせよし

家業としての商売

渡辺:遠藤波津子グループさんも伊勢由さんも、代々ご商売をされていますがご家族で「商売」についてお話をされることはありますか?

遠藤:娘と話していると、若い人というのはすごい正論を言うなと思います。だから我々は突っ込まれると答えようがない(笑)。 「なんでこんなことしてるの?」なんて言われると、確かにそうなんですよね。だけど今までずっとやってきたから、そうだねって言えないしね。
 若い人たちはまだ染まってないから客観的に、ある意味でお客様の立場からものが言える。我々みたいに染まってしまうと、なかなか変えようと思っても変えられないじゃないですか。

渡辺:そうですね。話をすることで新しい局面なんかが出てきて。

遠藤:まさにそれは、新ちゃんたちがやっているように、いろいろなことにチャレンジするというのは、お父様の代だとなかなか難しかったりすると思います。

渡辺:おでんのやす幸の石原さんがおっしゃっていたんですけど、「そうはいっても、おやじの言ってたことが合ってたな」って。これまでいろいろと経験なされてきた、81歳の石原さんからそういう言葉を聞かされると、私なんかはもう何も言えません。

遠藤:子どもも多分そういうふうに思ってる部分があると思います。けれども、やはりまだ若いから、ちょっと親父には「こんなことやってたら駄目なんじゃない」とかって言ってみたくなる。だけど一方では「やっぱりこうやってないとやばいのかな」っていうのを感じているとは思うんです。

渡辺:会社の上司・部下の関係だと遠慮しちゃって言えない部分までも、ファミリーだともう一歩突っ込んで言える部分もありますね。

遠藤:そう。うちに帰ってきたら、もう大変。そんな文句ばっかり言われたって困っちゃうよ(笑)。
 うちの親父やなんかに似てるのかもしれないけども、妥協しないの。だからすごく時間がかかるんです。

渡辺:ちゃんと納得するまでやる。こだわりがある。

遠藤:「おまえ、そんなのにいちいち時間かけてたら大変だよ。だからもっと早く決断しなさい」って言うんだけど、意外とこだわりが。

千谷:うちも同じ。一世代飛ぶんですよね、多分。おじいさまやおばあさまに似るんじゃないですかね。

渡辺:世代を超えてもこだわりや想いが、しっかりと繋がっていくんでしょうね。

「銀座いせよし」の帯
お雛さまや苺の柄がかわいらしい女性を演出する、「銀座いせよし」の帯。

これからの銀座の街づくり

渡辺:文化や商売で、今後の銀座がこうあってほしいなといったお考えはありますか。

遠藤:僕は、街づくりをやっていたので、なおさら感じるのかも知れませんが、やっぱり店や人がビルの中に閉じこもってしまうのは面白くない。銀座の街区をBeautifulとよく言い続けてきたけれど、ヒューマンスケールの街、楽しめるような街であってほしいわけです。
 ところが最近開発されたビルは、中にいろいろなショップがあるんだけども、なんか入りにくい。だからもう少しみんなが楽しみながら、ウインドウショッピングしながら行けるような。あまり中に入ったり、上まであがらなくても楽しめる、そういう街がやっぱりいいのかなと思っています。

渡辺:楽しく歩き回れる、からだ全体で感じることができる街ということですね。

遠藤:そう。ちょっと寒いときでも、銀座っていろいろな所にちょこっと入る場所があるでしょ。丸の内なんかはかっこよくて銀座よりもずっときれいだと思うんだけど、銀座のほうがチョコチョコ、その辺行ったらパッと入れるような感じがありますね。

渡辺:それで知り合いもいますしね。あれがなんかホッとしますよね、人に優しいというか。千谷さんはいかがですか。

千谷:皆様が銀座にいらして褒めてくださるのは、「銀座に来ると安心するわ」とか「歩きやすいわ」とか「きれいだわ」とか、少し保守的な感じの言葉が多い。「銀座に行ったらすごい面白いことがあって!」という感じがないんです。それはおそらく、私たちがとても普通で、ある意味まじめな感じでやってるので、こうなっていくのかなと思って。理想だけでお話しすると、「銀座に行ったらすごい楽しかった」って、お客様がおうちに帰ってご家族に話せるような感じにもしたいと思います。

渡辺:新たな「ワクワク」を街中にですね。

壹番館洋服店 渡辺 新 壹番館洋服店 渡辺 新

千谷:ワクワクが、今までのようなワクワクと少し違うのかもしれませんね、これからの世代の人たち、私たちより下の人たちは。そのワクワクがいったいなんなのかは私もわからないんですけど、そんな要素も銀座の街に散りばめたいです。

遠藤:銀座だけにしかないもの、銀座発のものはというと、よく考えてみると意外と少ないかもしれない。ものづくりや銀座からお客様に対しての情報。そういうことは、銀座の中でやっていかないといけない。

渡辺:それこそ、明治に遠藤波津子さんがアメリカから最新の美容術を入れられたように、絶えず何か呼び続け、仕掛けて、いろいろなカルチャーに昇華させて、銀座にいらっしゃるお客様に楽しんでいただけるような街づくりをしていなければならないですね。
 お二方とも、本日はお忙しい中ありがとうございました。これからもご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

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