銀座人インタビュー<第7弾>
銀座にゆかりの深い「銀座人」たちに弊店渡辺新が様々なお話しを伺う対談シリーズ。普通では知ることのできない銀座人ならではの視点で見た、銀座話が満載です。

銀座人インタビュー〈第7弾 京都祗園編〉京都に見る祗園のおもてなし
お茶屋ぎをん安藤 安藤孝子様 × ユニゾン・キャピタル株式会社 パートナー 川﨑達生様

お店とお客

孝子さんの蝶々柄のお扇子
孝子さんの蝶々柄のお扇子

渡辺:先日、とあるお店でいいなと思ったことがあったんです。そのお店、基本的にサービスは女将さんなんですが、調理の若い子がお皿を出すときもあるんです。そのときの出し方も厳しくしっかりしているんですが、横から女将さんが「そっちが先じゃないよ!」と。(笑)

安藤:それはそれでいいと思いますよ。

川﨑:僕もいいと思います。というのは、いろいろなお店へ行くと、スタッフ同士で厳しいことをお客様がいる前で大声で言ってる店がたまにありますよね。
 これは極端な例だと思うんだけれど、イタリアンのお店でボーイ長と思わしき人が、何が理由かは判らないけれど、通路の奥で若いスタッフを叩いていたんです。バチンバチンって。

安藤:それはあかんわ。

川﨑:それが僕らお客に見えてしまっている。

安藤:食事がまずくなるやんね。そういうのは、お客さんが言わなあかん。

川﨑:もう二度と行かないと思った。バカらしいなと思って。本当に気分悪い。

安藤:むかむかするやんね。

渡辺:接客業として、それはお客様に見せてはいけないですよね。
 芸者さんの世界では、そういった厳しい面はあるんですか。

安藤:体罰はないですね。
 昔のお師匠さんで、お稽古中に気に入らない子がいるとバチを飛ばす方がいてはりましたけど。そのくらいです。(笑)

渡辺:私が言える立場ではないですけど、最近お客様のお酒の飲み方を見ていてびっくりするようなことはないですか。

安藤:そういうお客様は少ないですね。

渡辺:少ないですか。あまり飲まれないんですか。

安藤:いや、お客様の顔色を見てね、お酒を出さないときもあるんです。

渡辺:酔っていないんだけど今日は飲ませんとか、酔っているんだけどお酒を出してくださる日もあると。

安藤:ええ。それはもうお客様の体のことを思うてね。

渡辺:孝子さんは本当にお若くていらっしゃいますが、最近私の父の年代やそれ以上の方は、とても元気がいい。
 先日、秋葉原の赤塚さんという小料理屋で食事をしたのですが、その店のおばあちゃんがものすごい元気がいいんです。還暦を超えたくらいかなと思っていたら、なんと90歳でした!

安藤:へえー、すごい。

川﨑:90歳!すごいな。

安藤:いや、年いってる人のほうが元気なのね。

渡辺:元気いいですねえ。

安藤:この間もテレビで101歳の方のタバコ屋さんって出てはったんやけど、すごく元気でお釣りも暗算でパッと渡さはるしね、お肉を毎日食べはるんて。

渡辺:お肉ですよね。ご長命の方ってお肉食べてらっしゃる方、見ていると割りと多いです。

川﨑:やはり何を食べているかというのは、長い時間をかけてきっと効いてくるんでしょうね。

渡辺:かと言って、若いときから肉を食べてるわけじゃないですよね。きっとトータルで見てバランスの良い食事をされているんでしょう。私も見習わないと。

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母娘・父息子

川﨑:孝子さんは、お店の中で怒ったりしないですか。

安藤:娘が怒りますね。
 怖いです。今の考え方だから。私は「まあ、ええわ」と思うほうやから。

渡辺:孝子さんが娘さんを怒ることってありますか。

安藤:怒りません。
 怒るようなことしないもの。絶対にあたしに逆らってこないもの。口ごたえもしないし。本当に尊敬しているのかなんか知らないけど、全くもって。

渡辺:面白いですね。

川﨑:ある年齢から怒られなくなるとかあったんですか。

安藤:私ね、三つぐらいまでは、厳しくしつけをしていました。「いただきます」って言うでしょ、言うてんのに子どもやからなかなか食べないでしょ。

川﨑:たらたらしているということですね。

安藤:それをもう一回早く食べなさいと言う。食べない。もう一回言う。それでも食べないと一日ご飯なし。何でかって、三つまでに怒っとかなお行儀を覚えられない。だから、レストランへ行ってもナイフ、フォーク持ってご飯をいただいて、横に置いたら出て行ってよろしい。途中ではだめ。

渡辺:厳しいけれど、そういう教育だったんですね。

安藤:だから、もうほんとに泣いても怒られるわけ。すごい涙がこう出から、泣くなーって言ったら、プッと止まるの、うちの娘は。

川﨑:すごいですねえ。
 うちは男ですけど、悲しいときは泣いていい、痛いときは泣いちゃいけないって言っているんですが、泣いているのは痛いときばかりです。「おまえ泣くなよー!」とか怒って、泣いてるときにそう言ったらもっと泣くわけですからね。

安藤:男の子は何もしてもいいんです、私の感覚では。
 男の子は社会に出ていくんやから、少々のことやったって大丈夫。
 でも、女の子は身につけたらなあかん。女の子はいろいろな所へ出ていったときに、お行儀ができてないとあかんと、それだけのことですよ。
 例えばお茶碗を持たずにご飯食べたりしたら困るじゃないですか。やっぱりちゃんとお茶碗を持ってせなあかんわけ。そういうことは教えてました。

渡辺:何が本当にいいのかは分かりませんが、それはそれぞれのおうちのやり方でいいんじゃないかと思います。
 子どもには習うより慣れろですよね、門前の小僧みたいにもう本当に時間をかけていかないと。

安藤:だから、一番好きなものをさしてあげたいね。
 「これはだめなの」は、いかん。「やってみたら」でいいのちがいますか。
 私は娘に「あかん」とは言わなかったのね。何でもやってみたら。嫌やったらやめたらいい。そうでないと、伸びない。

渡辺:好きなものを何でもやらせてあげて。そうやって目標を持たせてあげる。

安藤:ええ。そうしたら子どもはぐーっと伸びていく。

渡辺:私から見て母娘というのはとても羨ましいです。親子でありながら、また別の関係を持ってらっしゃるから、父息子とまた違うじゃないですか。

安藤:ええ、父息子はやっぱりライバルと違うかな。

渡辺:でも、例えば孝子さんのようなご商売だと母娘がライバルになるんですか。

安藤:なりません。使命が違いますからね。

川﨑:なるほど、役割が違う。

安藤:私は舞妓からやってきたし、娘は学校出てお店をやってるから、もうそれでやっぱり考え方が違います。郭に入っている者と、入ってへん者の違い。

渡辺:どっちがいいとか悪いとかじゃなくて、違うものは違いますものね。

壹番館洋服店 渡辺 新 壹番館洋服店 渡辺 新

安藤:郭に入っている者のほうがお客様のことはよう分かるけども、今の人はそんなこと言うても無理でしょ。お客様自体が郭を知らへんのやから。

渡辺:なぜ郭に入っていると、お客様のことがよく分かるんですか。

安藤:やっぱり、長い時間その人をずっと見てきてますからね。

渡辺:そうですね。それこそ五十年以上見ていらっしゃいますよね。
 本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございました。 祖父(實)の時代より、三代にわたりお世話になっている安藤様の興味深いお話を、聞かせていただき感激の夜でした。
 今後ともご指導のほど、お願い申し上げます。

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