銀座人インタビュー<第17弾>
銀座にゆかりの深い「銀座人」たちに弊店渡辺新が様々なお話しを伺う対談シリーズ。普通では知ることのできない銀座人ならではの視点で見た、銀座話が満載です。

銀座人インタビュー〈第17弾〉伝統のフレンチとワインのあるべき姿
銀座エスコフィエ 平田之孝様

本質を発揮させる

渡辺:父の明治が「樹」グラスは素晴らしいと褒めておりました。

平田:ありがとうございます。
 お陰様でエスコフィエのワインは、健全で美味しいとの評価をいただいていますので、その健全な美味しいワインの本質をいかに発揮させることができるか。そのワインの本質を発揮させるために、私が発見した「楕円理論」が世間に1日でも早く認められるかどうかが、当面の課題となっています

渡辺:楕円理論とは具休的には、どういうことですか。

平田:簡単に申し上げると、ワインに関して「皆様は、グラスに注がれてボトルの中とは別の性格になったものを飲んでいた」ということが言えます。
 通常のグラスは、殆ど正円です。正円のグラスに注がれたワインは、注がれた瞬間にグラスの底の中心点を基点として味を決める分子の結合が起こり、それぞれのグラスにより個々の味わいを現出してしまいます。同じワインがグラスの形状の違いに合わせて自分の味わいを変えてしまうのも、この分子の結合によるものなんです。
 健全なワインは本来、食材に対して相性でいう(100%ではありませんが)、柔軟性=オールマイティー性を有しています。正円のグラスに注がれたワインは、味や性格まで変化してしまうという現象により、本来有すべきこの柔軟性=オールマイティー性をも失ってしまうため、「このワインとこの料理は、相性が悪い」という組み合わせが数多く存在してしまうのです。これは、ワインが合わないのではなく、グラスによって変化させられた別のワインの個性が拒絶しているのです。
 私が開発した樹グラスは、底の形状を楕円にすることで焦点を2つにし、ワイン内に存在する味の決定要素である分子が結合することを防ぎ、ボトル内であれば有しているべき柔軟性=オールマイティー性を保つことを可能にした楕円理論によるグラスです。私のこの理論は、慶應の味の研究機関AISSYですでに実証されており、今現在も大手企業や国立大学の研究室の研究課題として研究が進められています。

平田様が開発された楕円形が特徴の「樹グラス」。
ワインのあるべき姿を保つグラスです。
樹グラス

銀座の未来

渡辺:これからの銀座はいかがでしょうか。

平田:これからの銀座は、非常に厳しいのは事実です。飲食に関して、お昼はマダムのお客様で賑わっていますが、ディナータイムが厳しくなっています。
 社用関係や接待の減少、製薬会社の接待の禁止などマイナス要囚が結構ありますから、どこまで辛抱していけるかが今の課題です。これで消費税が上がって、外食費用切り詰めなどの事態になれば死活問題です。

渡辺:ほとんどの人が直面している問題ですね。打開策はあるのでしょうか。

平田:個々のお店が内面を充実させて、体力を付けていく以外にないと思います。
 その意味で、当店は「エスコフィエのワインは健全で美味しい」との評価をいただいていますので、美味しい料理のご提供はもちろん、グラスの開発なども含めワインにも力を入れています。

渡辺:銀座を楽しみにいらっしゃるお客様に何か共通的に感じられることはございますか。

平田:最近はある程度子育てが終わり、資金的にも余裕ができた奥様方が多いようです。

渡辺:なるほど。長年通ってくださる方も多いという幸せな町ですね。

平田:そうですね。三代四代と代を重ねて通ってくださいます。ただ、やはり年齢層が高いために街として若手に切り替わるパーセンテージがあまり多くない、そこが悩みの種です。

渡辺:確かにそうですね。皆様のご苦労があって今の銀座が成り立っている。

平田:しかし、ただ長く続けるだけでなく時代の流れに合わせたスタイルも感じ取って汲み取ることも大切です。そして、自分がプライドを持って歴史を守ってきた姿勢で、支持されなくなったら静かにフェードアウトすると。

渡辺:平田さんは、昔から守ってきた変えないものも頑なにお持ちですし、樹グラスのようにどんどん変えていかれるものもあって、そのバランスは素晴らしいと思います。伝統を守りながらもチャレンジングにというのは本当に銀座らしいと思います。

平田:ありがとうございます。それは大切な姿勢だと思います。
 私は二代目で、学生の頃から何になりたいとか、これになりたいという思いがなく、店を継ぐものだと敷かれたレールに乗って店を継いだのですが、ある時家内から「お父様が何か物事を興したように、あなたも何か新たなことを頑張ってみたら」とアドバイスがあったところに、健全なワインのことを本にしてみないかというお話をいただいて「ワインの神秘」を書きました。
 今まで自分の経験してきたことを文章にする中で、頭の中が整理されて「こういうこともあるのではないか」「こんな発想もあるのではないか」と、どんどんアイディアが生まれて樹グラスが開発できたんです。

渡辺:本を書き進める中で、チャレンジした副産物としてグラスが生まれたと。

平田:そうなんです。
 ですから何かにチャレンジする、新たな一歩を踏み出すとその先にはまた新たな広がりがあるのかと思います。

渡辺:お話をお伺いして、銀座の名店のオーナーが平田さんのワインセミナーに参加する気持ちがわかりました。今後セミナーは開催されないのですか。

平田:昨年は、料飲組合の後押しもあり、一般の人向けにセミナーを行いました。
 今年は、小グループでも私のセミナーを受けてみたいという方達のため、日にちを限定せずに、集まったら随時開催という形で開催したいと思っています。
 現に、図書館で私の「ワインの神秘」を読み、人を集めるのでセミナーを開催して欲しいとのご依頼を受けています。
 このように、私もやっと銀座に頁献できる立場になり、家内の「還暦を迎えて、相応の身なりも大切よ」とのアドバイスもあり、壹番館さんでこのダブルのスーツを作らせていただきました。

渡辺:ありがとうございます。とてもお似合いでいらっしゃいます。

平田:着心地もまったく違いますし、人前に自信を持って出られますよね。ハムレットのオフェーリアの父ボローニアスが息子レアディーズの留学に際して名言の一文があります。 「・・・。財布の許す限り着るものには金をかけるがいい、風変りなのはいかんぞ、上等であって派手ではないのだ、服装はしばしばその人柄をあらわすという、・・・」  私もまさに、その通りだと思います。

渡辺:私どもも、日々、仕立道に精進しお召しになった皆様に豊かな気持ちになっていただける洋服を作り続けていけるよう、努力してまいります。
 本日はお忙しい中、ありがとうございました。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

Escoffier(エスコフィエ)
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