銀座人インタビュー<第19弾>
銀座にゆかりの深い「銀座人」たちに弊店渡辺新が様々なお話しを伺う対談シリーズ。普通では知ることのできない銀座人ならではの視点で見た、銀座話が満載です。

銀座人インタビュー〈第19弾〉和菓子の商いと銀座
株式会社虎屋 17代当主 代表取締役社長 黒川 光博様

歴史を見る

渡辺:歴史という面ではヨーロッパの会社は、自分の会社の歴史やアーカイブをうまく使います。とらやさんでも昔のアーカイブを順繰りにお見せになられていますね。

黒川:当社には虎屋文庫という古いものを扱ったり研究したりするセクションがあり、社内外から年間に1300件くらいのお問い合わせがあり、そのセクションがかなり機能しています。和菓子を好んだ歴史上の人物の紹介、和菓子と型の展示、和菓子の材料展などいろいろな発信をしています。
 先ほど召し上がっていただいたまんじゅうは「若草饅」という名前で、薄いグリーンと白との染め分けは、時期的に今ごろの若草が萌えだしてきたというイメージのものです。これも1773年くらいに書かれた記録に出ていたものです。
 もうその頃に先ほどのまんじゅうは存在していて、そのまんじゅう1つにも時代性や物語があるわけです。

渡辺:以前、黒川さんに伺ってびっくりしたのはレシピです。とらやさんはとても古い歴史をお持ちなので、レシピを変えるのに社内的に抵抗があるのかと思ったら、今のお客様の舌に乗せておいしいレシピにしないとだめだということで、そこはかなり柔軟に変えられるということでしたね。

黒川:私はそう思っています。

渡辺:ある意味、びっくりしました。

黒川:今の世の中の流行で「あまり甘くなく」と言われたとしてもそれぞれの材料とのバランスがありますから、砂糖を減らせばいいというほど簡単な話ではありません。洋服づくりだって、今年の流行はこうだからといって、そこだけ何かすればいいというのではなくて、やはり全体のバランスという問題も出てくるでしょう。

渡辺:とらやさんは、コンセプトはそのままに300年400年と繋いでいながら、味は改良している。

黒川:そうですね。いくら私が“これは1700年当時の味です”と言ったって、召し上がったお客様に美味しくないと言われてしまったら意味がありません。

渡辺:今、現代美術は特にコンセプトの部分が大きいですから、味はもちろんそういう蘊蓄というのがとても大事になっている気がします。とらやさんのように、500年以上の背景を持っている会社はなかなかありませんから。

とらや 銀座店
とらや 銀座店
営業時間 平日・土曜 10:00〜20:00
日曜・祝日 10:00〜19:00
定休日 年中無休
中央区銀座7-8-6
TEL. (03)3571-3679
http://www.toraya-group.co.jp/

銀座という街

渡辺:汐留、日比谷、丸の内、日本橋と最近、銀座の周りがどんどん開発されています。200mのビルで周りを囲まれて、銀座だけ56mで150m下がった盆地みたいになっています。
 黒川さんは銀座のこれからに対して、銀座にこうあって欲しいといったイメージはお持ちですか。

黒川:茂登山さんの言葉ですごく感慨深く思っているものがあって、「銀座には日本の古い店もあるし新興の店もある、新しく入ってこられた店もあれば外国ブランドももちろんある。そのみんなが共存できるのが銀座だ。だって古い店だって、最初は新しいだろう」と。それが長くなるから古い店になって、自分たちの最初を思えばその新しい店を阻害するのはもう全然筋違いだとという意味のことをおっしゃっていました。それはやはり非常に含蓄のある言葉だと思うし、街が活性化して生きていく上において新しい店というのはとても大切なのではないかと思います。
 我々のように古いところが新しいところを見て、ちょっと眉をしかめながらも刺激を受けていると思うし、例えば外国の店が大きな顔するなと思ったとしても、そこから得ているものはすごくある。やはり多種多様な店が共存できる街というのはすごいと思うし、それはいろいろなお客様を呼べる要素でもありますよね。

渡辺:そうですね。
 ですから、今、黒川さんがおっしゃったように、どんどん生み出していく力を衰えさせてはいけないと思います。

黒川:古い我々だって、自分たちだけがポッと置かれたときに新しいものを生み出す能力がどれだけあるかというと、それはもう本当に低いと思うのです。だけれども、例えば銀座みたいな街にいて、新しい店や外国の店を見ていろいろなものを得て新しいものを生み出す力を大きくしているのです。

渡辺:そうですね、刺激を受けながら。

黒川:本当に刺激を得ています。例えば“こんなことをやっていいのか”と思うことだって、ある意味の刺激ですから。

渡辺:眉をしかめるのもひとつの刺激。

黒川:自分はああなりたくないと思うこともあるかもしれないし、そう思っていたけれども、3年経ってみてあそこが調子がいいぞと思えば、何がいいのだろうかと気になったりしている。幸いにもいい意味で共存し合って、我々も刺激を受けているだろうし、新しい店は逆に古い店がああいうことを大切にしてやっているのかと思っているかもしれない。この環境はお互いにいいのではないかと思うし、少なくとも私にしてみればすごく居心地がいいというか、助けていただいている感じがします。

渡辺:やはり切磋琢磨とお互いを尊重する気持ちが街をつくっていくということですね。特定のスタイルではなくてお互いに磨き合うような。

黒川:ここの10年、15年くらいでいろいろな店が増えていますが、それはある時代の銀座より今のほうが活性化しているのではないかと感じています。

渡辺:私もそれは強く感じています。また、銀座ならではの繋がりの強さという魅力もあると想います。

黒川:そうですね。先日キックオフイベントが行われた、東日本復興応援プロジェクトの『やっぱ銀座だべ』などもその象徴ですね。
 これは、被災地と銀座の企業や商店などがお互いのノウハウなどを相互提供するなどして、人材的交流なども考えたプロジェクトです。キックオフイベントには100名以上もの来場者がありました。

渡辺:この繋がりというのは、銀座が他の街に対して自信を持って自慢できることの1つですね。よく黒川さんがおっしゃっている「毎日創業なのだ」という気持ちがあれば銀座は今後も成長を続けていくのでしょうね。
 本日はお忙しい中、貴重なお話をいただきありがとうございました。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

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