銀座人インタビュー〈第24弾〉
銀座にゆかりの深い「銀座人」たちに弊店渡辺新が様々なお話しを伺う対談シリーズ。普通では知ることのできない銀座人ならではの視点で見た、銀座話が満載です。

銀座人インタビュー〈第24弾〉三年五作。 里芋名人の畑を訪ねて
タジちゃんの新鮮野菜 田島 穣様、上野 英子様

専業農家

渡辺:今、田島さんの周りで専業で農業をやっていらっしゃる方は、どれくらいいらっしゃいますか?

田島:専業でやっているのは、近所だと2軒ぐらい。集落は32軒あるんですが、専業は3軒です。

渡辺:1割しかないんですね。

田島:もっと大きい単位で集落が4つ集まった中でも、専業でやっているのはその3軒だけです。本当にもう専業農家はほとんどないんです。

渡辺:それは農業収入だけじゃ立ち行かないから、外で働いたりということですか?

田島:そうです。農外収入でコンバインやトラクタを買っているんです。
 よく農業は駄目だとかテレビで言っていますが、兼業農家が狭い土地にお金や時間をかけて守っているから日本の国土が守られているわけで、少数の専業農家だけでは守りきれない。特に中山間地では、兼業農家がなくなったら、美しい景観はなくなるし、泉もできなくなって大変な事になると思います。近年、洪水も増えていますし。

渡辺:しかし、どうして兼業になっていったんでしょうか?

田島:やはり農業だけの収入では生活ができないから、どこかで収入を得なくてはならないんです。

渡辺:収入が少なくなってしまう理由の一つに、同じ畑で単一種ばかりつくって収穫量が落ちていることもあるんですよね。
 どんどん非効率な方向に向いてしまっているのに気付かないというのは、恐ろしいことですよね。そういう方は意外と多いんでしょうか?

田島:多いです。自分一人じゃなくみんなできなくなっていくから、しょうがないしょうがないと言いながら流してしまうんです。自分一人ができないならどうしてだろうと考えますが、みんながみんなできないから、平気なんですよ。

渡辺:怖いことですよね。盲目というか。

田島:価格もどんどん安くなってきています。米も30年ぐらい前には1俵2万2000円ほどだったのが、今は1万2000円です。
 野菜も30年間安くなり続けてるという感じです。市場も本当に安くしか買わないから、若い人はやりません。今、若い人で残っているのは、イチゴ、ニラ、トマトぐらいです。

渡辺:どんどん野菜が食べられなくなってしまいますね。

田島:この辺では、露地野菜を作ろうという若い人はほとんどいません。みんなハウスを建ててその中でイチゴ、トマトもしくはニラを育てています。
 普通の畑ではいつの間にか収量が減ってきたら、肥料を今までの1.5倍かける、途中で追肥をすればいい、こういう農薬が効くよ、と、始まるんです。

渡辺:今のお話を聞いて西洋医学を思いました。
 具合が悪くなれば薬、臭いものにはふたをして全体の調和が取れなくなって、にっちもさっちもいかなくなって、もうお終いということですよね。

田島:土地が駄目になってしまったら、里芋だけではなく麦もできなくなってしまって、それをまた元に戻すのに5年、10年かかってしまいます。

渡辺:5年ぐらい腰を据えれば元に戻るんですか?

田島:いくらかは戻ります。よくトラクタできれいに耕して休耕している畑を見かけますが、休耕するときは草を生やしたり、植物で覆いながら休耕しないと駄目になってしまいます。

渡辺:同じ休耕するなら、ぼうぼうにしたほうがよいんですね。

田島:畑を始める時には枯れた草を粉砕して入れてやるのが一番よいと思います。そうすれば枯れた草はすぐには腐らずゆっくり地面の中で腐っていき、それがフカフカな土をつくりだし微生物も増えるんです。
 それにそのような粗大有機物が入れば、微生物や小動物、昆虫などが地面の中で生まれたり死んだりすることで、いろいろな栄養素もできると思います。

よい畑とは

渡辺:日本全国で今、畑に立っていらっしゃる方は70歳以上の方がほとんどだと聞きますが、田島さんの周りでも今の代でもうお終いにするという方がいらっしゃいますか?

田島:残念ながらそういった方が多いですね。

渡辺:これから農業を国として続けていくなかで安全保障の面もあると思いますが、どうしていったらよいのでしょう。

田島:私が見ている分には、やはりもう日本は貧しくなるのが目に見えているから企業が農家をしたいんだと思うんです。
 農地は余るほど出てきていて、借りても買っても二束三文で安いんです。企業はそこで農業をやって自分で値段を付けてネットで売れるわけです。売れば中間マージンがない分儲かるわけですから、農家に企業が取って代わる時代がそろそろ来るのかなと思っています。

渡辺:そうなると、今のような構造はなくなって、利益追求の農業になってしまいますね。

田島:食べ物の質は落ちてしまいそうですね。
 今はまだ「食べ物」ですが、そのうちに飼料じゃありませんがただ生きるための餌、農業は人間が食べる餌づくりをするようになってしまうと思います。

渡辺:餌になってしまいますよね。人間の…。
 東京の外食を見ても、素材の味で勝負ができないから化学調味料がしっかりと使われています。食べ続けていると体を壊しますよね。
 実際、医療費を見れば膨れ続けているし、糖尿病、動脈硬化、心筋梗塞の患者さんも多いです。全て食べ物からですよね。

田島:でも、それに気が付いたのだからすごいですね。農村の人たちのほとんどは気付かないんです。化学調味料がいっぱい入ったものが、おいしいと思っている人が大半です。
 農家でも生活の糧として、ただお金を稼ぐだけの仕事としてトマトやイチゴをつくっている人たちは、その味についてはあまり…。どうやったらおいしいものができるか、まずいものになってしまうのかにこだわらないんです。大半の人がきれいな物がたくさんとれてお金になれば良いと考えています。
 また、子どもたちには野菜嫌いがたくさんいます。化成肥料を大量にまいてつくったまずい野菜ですから食べたくなくて当たり前です。

渡辺:味に無関心でつくっている人も多いということですね。

田島:そう。みなさん大切にしているのは味ではなくて収量です。真剣に人のつくったものを食べてみたり、観察したりしないんですね。自分のところだけ、俺のが一番うまいんだって思っています。

渡辺:比べてみないんですか?

田島:真剣に比べていないです。
 有機農業をやっている人でも、ほとんどの人は堆肥を何トンやっているって威張るぐらいです。

渡辺:表面的な有機農法で終わってしまっているんですね。

田島:他には自然農法というものがありますが、自然農法はおいしいものができますが収量が少ないから生活にならない。私は今、その中間にいます。この先、全て自然農法でいけたらいいなと思っているのですが。

渡辺:肥料の問題とは別に、農薬の問題というのもありますよね。よく無農薬栽培などと聞きますが、実際はいかがですか?

田島:一つのものをたくさんつくろうとすると、無農薬というのは難しいんです。全滅ということもあり得ます。そうなってしまうと生活になりませんから、それを回避するためにいろいろな野菜をつくれば、忙しいけれど全部駄目になることはない。適地適作、昔からの輪作をやれば無農薬というのはそれほど難しくないんです。
 それに虫が付くというのは、その場所にその植物があってはまずいですよと虫が教えてくれているんだと思います。テレビなどでは、おいしいから虫が付くんだと言っていますが、それはウソです。虫が付くのは、今そこにその作物があるのは不自然だよと虫が教えてくれているんです。

渡辺:過ちを虫が教えてくれているんですか?

田島:そう。ですから、虫が出たら何で出たんだろうと考えると、不自然だから出たんじゃないかと思うんです。
 今まで一番面白いと思った畑は、カボチャを収穫し終わったあとに手押しの草刈り機で草を粉砕して、そこに菜っぱの種をばら蒔きしたんです。菜物も雑草も生えてきたんですが、菜物は食われないで雑草が虫に食われたんです。

渡辺:生えてきた雑草が食われたんですか?

田島:そうなんです、雑草が食われて菜物は食われなかった。面白いと思いましたね。
 これは私の考察なんですが、何で雑草が食われて菜物が食われなかったかというと、菜物というのは、人間が品種改良してつくったものだから肥えた畑に育つもの。雑草は何もないところに育つもの。雑草には肥えすぎた畑だったということなのかなと。

渡辺:要はその土にその作物が合っているか合っていないか、それを虫は知っているわけですね。

田島:虫にはそれがわかるんだと思うんです。

「あさひな」の上野英子様
当インタビュー第20弾にてお話を伺った、
「あさひな」の上野英子様
初めての里芋掘り
初めての里芋掘り
ツルの下に沢山連なる里芋にビックリ

硝酸中毒と低農薬

田島:昔、硝酸中毒で牛が死んでしまうのが問題になったことがありました。牛は硝酸が多い植物を食べると死んでしまうんです。
 高校時代、畜産科の友達が教えてくれたんです。“堆肥のところに生えた菜っぱは、でかくていいけど絶対に食うなよ。あれ食べたら気持ち悪くなるんだ。あれはな、牛が食うと死ぬんだから”って。

渡辺:そうなんですか。牛は田島さんの畑と慣行栽培の畑があったら、田島さんの畑ばかり食べるとおっしゃっていましたね。

田島:作物の味に農薬はあまり関係なく、ほとんど肥料で味が変わるんです。苦い、エグい、甘味が足りないというのは、肥料の使いすぎなんです。おいしくないから自然と食べたくなくなりますよね。今、農薬ではネオニコチノイドというのが一番問題になっています。
 最近、ミツバチが減ってると騒がれていますが、その原因がネオニコチノイドなんじゃないかといわれているんです。低農薬を農薬の会社が売りにしているんですが、そのネオニコチノイドが入った殺虫剤を使うと殺虫効果が長持ちするんですよ。植物の中に入ってずっと持続してる。持続するから少量で済む。
 例えばトウモロコシにかけたりすると、咲いた花の花粉をミツバチが取りに来る、そのミツバチが花粉や蜜を巣に持って帰ると幼虫がそれで死んでしまう。昔は上からかけるだけだったものが、今は植物体の中に入って持続する農薬になっているので気を付けないといけないんです。
 群馬のお医者さんで、ブドウ、桃、梨などの果物が出始めると、子どもたちがたくさん病院に来るんだと話をされている方がいました。

渡辺:アレルギーですか?

田島:そのネオニコチノイドを使った果物が出回ってくると、果物と一緒に農薬の成分が脳幹から脳の中に入って、おかしくなってしまう。果物を食べなくなれば2カ月ぐらいで正常に戻るということですが、本当にひどい場合は泡を吹きながら運ばれてくるらしいです。多動症もそのせいではないかと疑われています。
 人間の脳幹は大人になると縮まって有毒なものはあまり入らないらしいのですが、子どもは開いていて有毒なものも入ってしまう。どうやら農薬が入ってそのような状態になるようです。その証拠に子供に良くないタバコやアルコールは二十歳と決められています。

渡辺:なるほど。成長にあわせて制限をかけているんですね。

自然が教えてくれた震災

上野:田島さん、3.11の前に何かご自分の体に変調をきたしたということを前に伺いましたが、どういうことだったんでしょうか?

田島:普段、私は家に帰れば夜は居間でテレビを見たり、本を読んだり、ちょっと細かいものをいじったりするんですが、震災の1カ月ぐらい前からは胸がソワソワして本当にいたたまれなくて、ゴロゴロして何をするでもないという感じが続いたんです。震災が起きたその日、朝バイクで畑に行って仕事を始めたんですが、それまでは昼間は仕事をしていればその変な気持ちを忘れていたのですが、その日は畑に行っても本当にソワソワして、いても立ってもいられなくて今日は仕事はいいやと山を縦横無尽にバイクで走り回っていたんです。1時間ぐらい走り回って、ちょっと胸が落ち着いたので山から下りて畑に戻ったんです。そうしたらいきなりあの揺れが来た。
 不思議なことにその日の夜からは、今までのようなソワソワした気持ちはなくなったんです。

渡辺:同業の方で田島さんのように感じていた方は他にいたんですか?

田島:それが、一人だけいたんです。先日、同窓会で「3.11の1カ月前に田島と会ったよな。あの時、俺、近いうちに田島に何かありそうだから気を付けろよって言ったよな」と言われて思い出したんです。彼も農業をされていて、3.11の1カ月前から自分と同じ体験をしていたと聞きました。

上野:この話を聞いたときは鳥肌が立ちました。これはね、きっと大切に育てている野菜の力なんだと思いました。本当にすごいことですよね。

田島さんのこれからの農業

上野:今は奥様とお二人ですが、これからご子息が大学を卒業して帰ってくると、それからがまた新たな田島さんの始まりじゃないかなと思っているんです。

田島:息子が継いでくれれば、息子たちは週2日、私たちも週1日はゆっくり休めるようになります。

上野:本当に、早くそうなって欲しいです。

田島:それでいて、今の1.5倍ぐらいの畑を楽にできるようになります。

渡辺:その流れでこれからの農業をどうお考えですか。

田島:農業全体のことは自分ではどうにもできませんから、あまり考えないようにしています。
 自分の農業のことを考えれば、どれまで続くかはわかりませんが自分の思うような野菜をつくって、食べてくださる方に直接買ってもらえたらいいなと思っています。お客様の顔を見たらやはり変なものはつくれませんし、もっともっと美味しい野菜をつくっていきたいと思います。

渡辺:本日はお忙しい中、色々と見学をさせていただき、また、たくさんのお話をお聞かせいただき本当にありがとうございました。
 これからも美味しい野菜をつくり続けてください。楽しみにしております。

アンリロ
営業時間
11:30〜17:00(L.O)
ランチ営業、日曜営業
定休日
月曜日・第2・第4日曜日
栃木県鹿沼市上材木町1684
TEL. (0289)62-0772
アンリロ
銀座人インタビュートップへ