銀座人インタビュー〈第27弾〉
銀座にゆかりの深い「銀座人」たちに弊店渡辺新が様々なお話しを伺う対談シリーズ。普通では知ることのできない銀座人ならではの視点で見た、銀座話が満載です。

銀座人インタビュー〈第27弾〉銀座くらま会 からす組 銀座を語る
七代目 常磐津兼太夫 鈴木 雅雄様 銀座いせよし 千谷 美恵様 久兵衛 今田 淑乃様 銀座ぎゃらりい 秋華洞 田中 千秋様 銀座ぜん屋 川口 彰久様 Artisan salon de giso 庄司 博美様 Biz One Inc. 広瀬 康令様 佐々木 倫子様

「からす組」の活動

渡辺:からす組、3年目ですよね。初年度に気づかなかったことが、3年目になると我々も、「おっ」と気づけるようになってきました。

鈴木:僕から見ると最初の始めた年からすると、とても変わっていますよ。

佐々木:どう変わりましたか?

鈴木:最初は“何だかわからないけれど、号令がかかったからやっています”みたいな感じでした。でも今日は「じゃ、僕唄いませんからね」と言ったでしょう。去年はそれをやっても、まだできなかったんです。自立できるようになってきました。

渡辺:先生には本当に申し訳ないなと思うんですけれど、お稽古が始まる前に「よろしくお願いします」、終わった後に「ありがとうございました」と言うのにたどり着くまで、私たちも3年かかっているわけじゃないですか。初年度は、先生にご挨拶なんてないまま、ウワーッと終わってしまって。

鈴木:そういう習慣があるかどうかを知らないで、おみえになっているのだからしょうがないです。知らないところからできるようになるには大変ですよ。1から2になるのは割に簡単なんです。ものを覚えようとするときというのは、0から1が一番大変なんです。だから、3年目で僕が「ああ、だいぶ変わったな」と思ったのは、自分でご判断して、こうするべきなんだなと思ってしていらっしゃる行動がきちんとしてきたわけです。だから今日のお稽古は早く終わったでしょう。

佐々木:本当、早めに終わったものね。

鈴木:これはもうみんな自立してきたから。後は皆さんが自分たちで転がって行くエネルギーがあれば、あまり言わなくてもいいかなと思って今日はあまり指導しなかった。今日来れなかった人たちは、それに引っ張られて動いて行くようになりますから。

渡辺:そうですね。

鈴木:また続いていってくれれば、もう少しハイレベルなものにもなっていくだろうなという気はしています。

佐々木:今年はすごく面白い。からす組でブログを始めたり、皆でがんばろうというのを感じます。私は去年から参加させていただいていますが去年と今年はすごく違っていて、やはりオリンピックを控えているというのもすごくあると思うんです。皆がそれぞれこういう形で盛り上げていこうという、一人ひとりの気持ちのモチベーションが違ってきています。

渡辺:街を盛り上げていこうという。

佐々木:はい。もちろん自分のご商売もあるんですけれども、それだけではなくて、一生懸命がんばろうという人が集まっている気がとてもします。

広瀬:からす組の目標というかゴールはどういうところですかね。海外公演ですか。

渡辺:海外公演いいですねえ。 あまり大きな声では言えませんが、邦楽界から見れば、私たちもカリフォルニアロールみたいなものですからね(笑)。

鈴木:でも、カリフォルニアロールを食べたことがあるから、本当のお寿司の良さがわかるんですよね。

渡辺:カリフォルニアロールにはロールの役目がありますので。

佐々木:これを通して邦楽を知ってもらえるじゃないですか。「邦楽って面白いんだね」と言って、興味を持つ人がいるだけでもいいかなと思っているんです。

渡辺:でも、90回もの伝統のある銀座くらま会で、よく私たちを受け入れてくれましたよね。本当にうれしいですね。先輩方の懐の深さが、また銀座のよさだと思うんです。

鈴木:期待してくれているんでしょうね。実際、堅苦しいことばかりではいかんだろうというお考えもあるんだと思います。我々がやっている本職のほうは堅苦しいですから。

渡辺:なるほど。

鈴木:でも堅苦しいのが面白いというところまで到達している人にとっては、たまらないんですね。

渡辺:たまらないですね。贅沢な会ですものね。あれだけ人間国宝を見られる会もなかなかありませんね。

佐々木:みんな一流の人しかいないんですよ。

渡辺:私たちだけ、カリフォルニアロールなんです(笑)。

佐々木:でもカリフォルニアロールを面白いなと来てくださる方も、いっぱいいますからね。

鈴木:次は、何をするのかなと思って来てくださっている方をあっと言わせます。

佐々木:やはり1回目は衝撃だったらしいんですよ。こういう人たちがやるんだと。今までとは全然違うじゃないですか。だからほかの方と比べると面白かったと。それで2回目も進化したので、3回目も面白そうだねと言っていました。

渡辺:嬉しいですね。

鈴木:お稽古をしていて思うのは、熱心においでになってくださっている方というのは、中核になってくださるような気がするんです。お稽古をしている姿がとても楽しそうなんです。

佐々木:楽しいですよ。やはり自分で参加していて楽しいですもの。

鈴木:楽しそうなのは、こうやって相対してお稽古をしていると伝わってくるので、それをもう少し増幅して舞台で出せたら、お客様はもっと楽しいですから。だから大きい声出してくださいとか、元気出してくださいと言うのは、そういうことなんです。

千谷:楽しい顔をして舞台に出るように心掛けて。

佐々木:あとはいかに緊張感から脱却するかですね。

千谷:全員、相当緊張した顔をしているものね。

渡辺:あれは、緊張しますよね。

鈴木:舞台でひとりぼっちというのは緊張するんです。みんなで唄っているのはわからないんですが、ひとりぼっちで、満員で1500人から1800人ぐらいの人たち全員が自分のことしか見ていない。その瞬間に口を開けて何かものを言うというのはそれは緊張しますけれど、気持ちいいですよ。

佐々木:まだそこまで到っていません。

鈴木:そこで面白いことを一発言ってしまおう、などとなってくれれば、もうできたも同然です。楽しみですね。口上のセリフとか思い切り面白いことを書いたらいいんです。

佐々木:だめだ、まだ面白いのに到っていない。

広瀬:プレッシャーですね・・・。

鈴木:楽しむことです。思い切り楽しんで下さい。

渡辺:どなたかが書いていましたが、社会人の習い事はすごくいいと言いますよね。というのは、仕事だと手が震えることはないでしょうと言うんです。

佐々木:確かにそうですね。

渡辺:それが習い事だと、ガタガタ手が震えることが素晴らしいと。

鈴木:それほど緊張することは、なかなかありませんよね。

渡辺:だって仕事で手が震えていたら、それは素人ですかということになってしまうから(笑)。その震えが習い事の醍醐味だということを、どなたかが書かれていました。

鈴木:商売になってもありましたよ。僕が舞台に出始めの頃なんか、歌舞伎座へ出て一番しっぽなんです。僕らは1曲の中で必ずひとつずつ、ソロを唄わないといけないんですが、まだ大学を出るか出ないかぐらいの年頃で歌舞伎座へ行って、舞台へ出て。僕の前で踊っている人たちは中村歌右衛門さんや先の勘三郎さん。神様のような人たちがぞろぞろ舞台にいるわけですよ。その人たちの前で一人で唄って、変な声出すと「ン」と、見られるんです。いい時もあればだめな時もありますが、その瞬間というのは足がつるんです。自分の唄う番になってピーンと足がつってしまって、激痛で唄う。

渡辺:おもしろい。

鈴木:1、2年そんなことが続きましたね。

佐々木:いつから大丈夫になったんですか?

鈴木:それは、自分で納得のいくものができたときですね。願っていたものよりも、ちょっとよくできたとき「あ、そうだ、これをやればいい。明日は今日よりまたうまく、明後日はまたうまく」と。でもそうはいかないんですけど。

渡辺:もちろん稽古でもそれだけ緊張しているんでしょうけれど、さらにそこにお客様が入っているという、本番のライブというのは最高に緊張しますね。

鈴木:その緊張にまた輪をかけるように、新橋の姐さんたちが客席にいるんですよ。すると「あ、若旦那が出てるわ」みたいな感じで、ほかの人の時にはそっぽ向いて、僕が唄う時だけ拍手の音。やめてー。あなたが私のサクラだって、すぐわかっちゃうじゃありませんか。2000人の中であなただけですよ(笑)。やめてくれたほうがいいんだけど、でも、ありがとうございますみたいな。本当に緊張に輪をかける。

渡辺:試合というのはいいですね。成長しますよね。

鈴木:成長しますね。

渡辺:お客様がその試合を楽しみに来てくだされば、銀座って楽しい街なんだろうなと思っていただける。

佐々木:面白味があるというのは、いいじゃないですか。

庄司:究極の大人の遊びですね。

鈴木:そうですね。「マジになってやってるよ、あの人」っていう。

渡辺:年に1回こうして演舞場に出るのは面白いですね。先生には本当にお付き合いいただいて。

鈴木:いえ、とんでもない。僕も楽しんでやっていますから。うちの家族の中で端唄をこんなにできるのは僕だけですから(笑)。

渡辺:端唄は難しいですね。

鈴木:覚える方は大変だと思います。

渡辺:いや難しい。毎回途中ですっ飛んじゃって、全然弾けない。

千谷:いや、渡辺さんはすごく練習していて万全ですよ。

鈴木:今年の渡辺さんは、ちょっと変身しています。はっきり言って、去年はぶったろかと思ったぐらい(笑)。「ほら、何やってんの。ほら、三味線かして」とやっていましたが、今年は僕がこうしてくださいと言ったら、自分で体が動くようになっていて、あ、変わったなと。あと、譜面に指づかいが間違って記載されていたんです。譜面が間違っているからどうやったってうまく弾けないんですが、それを奮励苦心しながら譜面どおりに弾いているので、あ、譜面を見て弾けるようになったんだと。譜面を見てから体に反映してくるまでのスピードが、去年と格段に違います。皆さん成長しているので、今後が楽しみなんです。

渡辺:がんばります。

鈴木:やはり3年目というのは、ひとつ結果が出て来る年なんでしょうね。中学校も高校も3年で卒業するように、ひとつの節目なんだと思います。

渡辺:くらま会の演奏会ももちろんですが、銀座の街づくり、街おこしもじっくり頑張っていきます。

銀座くらま会 からす組
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